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※敬称略
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第1日目 – 2021年8月7日 土曜日
- 9:209:30
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開会式
大会長:小﨑 健次郎
慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター
- 9:3010:30
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演者:半田 宏東京医科大学 ケミカルバイオロジー講座
座長:小﨑 健次郎慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター 抄録
サリドマイド(Thal)は1956年に鎮静催眠剤として販売されたが、妊婦が服用すると生まれてくる子供にアザラシ肢症などの胎芽症発症という薬害を引き起こし、1962年には市場から撤退した。ところが30数年を経て、難治病のハンセン病や血液がんの多発性骨髄腫(MM)への有効性が認められ、今ではThal誘導体も開発され、MMの治療薬として市場に舞い戻った稀有な薬剤である。我々はThalの多彩な薬理作用に着目し、アフィニティビーズ技術を用いて、それら作用に関わるターゲットの分離を試みた。その結果、Cereblon(CRBN)を分離・同定し、CRBNはE3ユビキチン(Ub)リガーゼ複合体のサブユニットである基質受容体として働き、Thal催奇性のターゲットであることを示した。さらに、Thalと第2世代Thal誘導体は、免疫調節剤(immunomodulatory imide drugs: IMiDs)と呼ばれ、がん細胞増殖を阻害し、かつ免疫担当T細胞を活性化する多面的な抗がん作用を発揮する。CRBNはこの抗がん作用のターゲットでもあり、またIMiDsの抗がん作用に関わるCRBNの新規基質タンパク質(ネオ基質)が同定され、ネオ基質がCRBN/IMiD複合体を認識し、選択的に結合し、Ub化・分解されることもわかった。その後、第3世代Thal誘導体が開発され、Thal誘導体の薬理作用が理解され、CRBN/Thal誘導体/ネオ基質複合体の高次構造も解明された。それまでの研究成果から、”CRBN E3 Ligase Modulators (CELMoDs)”および”CRBN-based proteolysis targeting chimras (PROTACs)”と呼ばれる2つの創薬開発の流れが生まれた。Thal主作用の研究を通じて、副作用も同様の機構で発症するのではと推測され、最近、Thal催奇性の原因となるCRBNのネオ基質が同定された。本学会では、これらネオ基質のUb化・分解により誘導されるThal催奇性の発症モデルを紹介したい。
- 10:3012:00
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シンポジウム1
ゼブラフィッシュを用いた先天異常学研究の新潮流座長:西村 有平三重大学大学院医学系研究科統合薬理学
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西村 有平三重大学大学院医学系研究科統合薬理学
抄録
先天異常には様々な遺伝的・環境的要因が関与することが示唆されている。先天異常のメカニズム解明において、小型脊椎動物であるゼブラフィッシュの有用性が世界的に認識されつつある。ゼブラフィッシュは一度の交配で数百の受精卵を得ることができ、遺伝子操作や化合物投与も容易に行うことができる。発生も速く、受精後5日目には主要臓器が形成され、様々な行動レパートリーが出現する。この時期のゼブラフィッシュの体長は3 mm前後であり、96ウェルプレートのウェル内で飼育することができる。従来、ウェル内におけるゼブラフィッシュの形態や機能の評価は、顕微鏡や行動解析に特化した装置が使用されてきた。近年、スマートフォンやタブレットなど、カメラ機能を有するスマートデバイスの普及率が高まっている。これらのデバイスを用いてウェル内のゼブラフィッシュのイメージを取得することができれば、遺伝子操作や化合物投与がゼブラフィッシュの形態や機能に与える影響を簡便に評価することが可能となる。本発表では、我々が開発したスマートデバイスを用いたゼブラフィッシュ行動解析法の概要と、先天異常学研究への応用について報告し、ゼブラフィッシュを用いた先天異常学研究の新たな潮流に関する議論の嚆矢としたい。 -
石谷 太大阪大学微生物病研究所 生体統御分野
抄録
近年の技術革新により、発生期の胚に生じたゲノム・エピゲノム異常細胞(不良細胞)を起源とするモザイクがアルツハイマー病や自閉症などの神経疾患や糖尿病や高血圧などの成人疾患の発症に関与することや、その異常が次世代に継承され疾患を引き起こすケースもあることが明らかになりつつある。これらの事実は、胚に生じた不良細胞の出現・活動の抑制が将来の疾患予防に重要であることを示唆する。我々は最近、ゼブラフィッシュイメージング解析により、動物胚が突発的に生じた種々の不良細胞を排除・抑制する細胞品質管理機構を備えていることを発見した。この細胞品質管理機構においては、隣接正常細胞が細胞間コミュニケーションを介して不良細胞の出現を感知し、不良細胞に細胞死を促すことで胚組織の恒常性を維持する。また、哺乳類胚においても同様の細胞品質管理機構が機能することがわかりつつある。興味深いことに、ゼブラフィッシュ胚に特定の環境変化を与えると、細胞品質管理機構が破綻して不良細胞が蓄積し、モザイク状の異常を生じる。したがって、ヒト成体に見られる変異モザイクの一部は、おそらく、この機構による除去を回避した不良細胞によって発生した、あるいは、除去機構の破綻の結果として生じた、と推測される。しかしながら、胚に不良細胞が出現するメカニズムや、胚に生じた不良細胞がモザイクを形成し疾患を引き起こすプロセスも不明である。本シンポジウムでは、ゼブラフィッシュをモデルとした、胚の細胞品質管理機構と、その環境因子・遺伝的因子による破綻と疾患の関連についての研究を紹介する。また、この研究に加えて、ゼブラフィッシュをモデルとしたヒト希少疾患原因遺伝子の解析の成果についてもご紹介したい。 -
川上 浩一国立遺伝学研究所 発生遺伝学研究室
抄録
ゼブラフィッシュは、(1)世代時間が比較的短く多産である、(2)飼育が容易で維持費用も安い、(3)体外受精し胚操作を容易に行うことができる、(4)胚は透明で胚発生が短期間に進行する、などの特長をもつ。さらに、トランスポゾンを用いたトランスジェニックフィッシュ作製法、CRISPR/Cas9法によるゲノム編集技術等が開発されてきた。このため、ゼブラフィッシュは基礎生物学研究だけでなく、ヒト疾患研究、創薬スクリーニングのための有用なモデル脊椎動物として確立されてきた。最近、データベース構築等による積極的なデータシェアリングを行う体制が構築され、希少疾患・未診断疾患研究を推進する国際連携が進みつつある。その背景には、全ゲノムを対象としたシーケンシング技術を利用して、患者および両親のゲノム解析を行うことにより、希少疾患・未診断疾患の原因候補遺伝子を同定することが可能になってきたことがある。我が国では2015年、IRUD (Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)が発足し、希少疾患・未診断疾患のゲノム解析が始まった。2017年、その遺伝子の機能をモデル生物(ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、線虫、酵母など)を用いて解析するためのJ-RDMM「モデル動物等研究コーディネーティングネットワークによる希少・未診断疾患の病因遺伝子変異候補の機能解析研究」がスタートした。このような疾患関連遺伝子と病態との関連性を、ハイスループット解析が可能なモデル生物を用いて解析することにより、因果関係等が明らかになり、既存の薬のリポジショニングなどにより症状を緩和する治療へとつながることが期待できる。 本講演では、ゼブラフィッシュのモデル脊椎動物としての特長とJ-RDMM計画における役割について紹介する。疾患の患者の情報は医学的倫理に基づいて管理される。
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- 12:0013:00
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企業セミナー
診療で用いるマイクロアレイ染色体検査演者:黒澤 健司神奈川県立こども医療センター遺伝科
抄録
マイクロアレイ染色体検査は、ゲノムのコピー数変化(Copy number variant: CNV)を評価する検査であり、生殖細胞系列の網羅的な遺伝学的検査の一つに位置づけられる。既に海外ではマイクロアレイ染色体検査は臨床検査として定着し、ガイドライン等が公表されている。マイクロアレイ染色体が普及した理由は、知的障害を伴う原因不明の先天異常症例の原因検索として極めて有用だからである。その診断確定率は、通常の染色体検査が3%であるのに対して10-20%にも及ぶ。しかも、その精度は染色体検査のような専門検査技師による職人ワザに依存せず均一に保たれ、プラットフォームを変えることにより、より微細なCNVも、さらにはコピー数変化のないヘテロ接合性の喪失(cnLOH)も検出できることにある。位置的情報は得られないが、先天異常および遺伝性疾患発症にCNVが深く関連していることは明らかで、このマイクロアレイ染色体検査の技術は、臨床検査としては極めて重要な位置を占める。2010年ころまでに医療中での位置づけが成された海外に10年遅れてようやく日本でもこの解析技術が体外診断用医薬品として承認された。 実際に、先天異常の医療でこのマイクロアレイ染色体検査を用いる際には、先天異常ないしは遺伝性疾患の成り立ちは勿論、上述の基本原理も理解しておく必要がある。このセミナーでは、臨床で用いる場合に念頭に置くべき基本事項をまとめた。
休憩(10分間)
- 13:1013:45
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総会
- 13:4514:15
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奨励賞受賞講演座長:大谷 浩島根大学医学部
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藤井 瀬菜京都大学 医学研究科 人間健康科学系専攻
抄録
【背景・目的】多くの成人肺の解剖学的研究が、区域気管支の分岐構造に関するvariationを報告している。この形態学的差異が生じる時期は明らかでない。本研究は、ヒト胚子の気管支樹の形態変化を観察し、気管支のvariationが生じる時期を検討した。
【対象・方法】京都コレクション保有のカーネギーステージ(CS)15~23のヒト胚子標本計48体を対象とした。全個体の位相 CT 画像を取得し、画像処理ソフトウェア Amira を用いて気管支樹を抽出し立体像を作成した。
【結果】CS15~23 において、気管と葉気管支の形態に個体差は認めなかった。葉気管支はCS15, 16にて形成されていた。左右の一次気管支芽上の対称な位置に右中葉と左上葉を形成している個体と、さらに右上葉を形成している個体を認めた。区域気管支と亜区域気管支は、CS17~19 にかけて形成が進んでおり、同一ステージの個体間にて形成の程度にばらつきが生じていた。CS20~23の気管支樹における区域気管支の形態として、左右の上葉においてそれぞれ4種類、右中葉と左右下葉ではそれぞれ2種類の計14種を同定した。
【考察】観察した全個体にて、気管と葉気管支は成人の気管支樹と同様の構造を示した。この結果は、葉気管支までは個体に関わらず典型的な構造を形成することを示唆している。CS15~19の気管支樹の観察から、葉気管支は一定の順序で形成される可能性があること、区域気管支の形成速度には個体差があることが明らかになった。さらに、CS20~23で同定した区域気管支の形態は、成人の気管支においても同様の形態が報告されていた。この結果は、成人の気管支樹の形態のvariationが胚子期において決定し、生涯にわたって継続する可能性を示唆している。本研究は医の倫理委員会で承認されている。(R0316) -
山田 茉未子慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター
抄録
腫瘍学の分野においてキメラ遺伝子形成は疾患発症機序として確立した概念となっている。キメラ遺伝子は逆位、欠失、重複、転座などの染色体異常により2つ以上の異なる遺伝子やその一部が融合して生じた遺伝子のことである。一方、先天性遺伝性疾患の発症機序の一つとしてゲノム構造異常は重要な位置を占めるが、ゲノム構造異常に基づくキメラ遺伝子形成やその影響について十分な検討はなされていない。我々は次世代シーケンサーを用いた網羅的ゲノム変異解析が一般化するなかで診断率向上のために打破すべき壁ともいえるゲノム構造異常の検出とそれにより引き起こされるキメラ遺伝子が形成されている患者の同定を目指した。標準的なエクソーム解析およびトランスクリプトーム解析で診断に至っていなかった患者56名に対して、がんゲノム領域で開発されたキメラ形成を検出するためのアルゴリズムChimPipeを適用し、2名の患者において診断確定に至った。1名は臨床所見からMowat-Wilson症候群が疑われているにも関わらず従来の検出手法で診断ができなかった患者においてZEB2-GTDC1融合遺伝子が形成されていることを検出した。全ゲノム解析を並行して実施し、ZEB2、GTDC1の両遺伝子を含む欠失を確認できた。他方は精神発達遅滞を伴う先天異常症候群の患者であり、カリウムチャネル構成因子KCNK9-TRAPPC9融合遺伝子が形成されていた。全ゲノム解析を並行して実施し、患者にKCNK9、TRAPPC9の両遺伝子に及ぶ欠失を確認できた。本研究により、生殖細胞系列変異による先天遺伝性疾患の発症過程においてもキメラ遺伝子形成が重要な役割を果たすことが示された。今後もトランスクリプトーム解析や全ゲノム解析のような新たな解析技術を用いることで先天性遺伝性疾患の疾患機序の解明に貢献したい。 -
Regassa Dereje Getachew島根大学 医学部 解剖学講座 発生生物学
抄録
INM is the apicobasal (AB) cell polarity-based oscillatory movement of epithelial cell nuclei in synchrony with the cell cycle, and is suggested to be involved in of the development of epithelial tubular organs. Here, we investigated inter-organ (trachea vs. esophagus) and intra-organ regional (ventral vs. dorsal) differences in the INM mode in the tracheal and esophageal epithelia of the mouse embryo. The pregnant mice received a single intraperitoneal injection of 5-ethynyl-2’-deoxyuridine (EdU) at embryonic day (E) 11.5 and E12.5 and embryos were obtained 1, 4, 6, 8 and 12 hr later. The labeled cell nuclei distribution along the AB axis was chronologically analyzed in the total, ventral and dorsal sides of the epithelia. The percentage distribution of the nuclei population was represented by histogram and the chronological change was analyzed statistically using multi-dimensional scaling. The inter-organ comparison of the INM mode during E11.5-E12.0, but not E12.5-E13.0, showed a significant difference. During E11.5-E12.0 the trachea, but not the esophagus, showed a significant difference between ventral and dorsal sides. During E12.5-E13.0 neither organ showed regional differences. These findings indicate the existence of different modes of INM between the two organs which derive from the common anterior foregut as well as between the dorsal and ventral sides of the trachea. These differences in the INM mode may be related with the later differential organogenesis/histogenesis between the two organs as well as between the dorsal and ventral sides of the trachea.
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休憩休憩(5分間)
- 14:2015:50
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一般優秀演題・プレナリー座長:
井関 祥子東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野
八田 稔久金沢医科大学一般教育機構解剖学1-
清水陽金沢医科大学 小児科学
抄録
本研究では妊娠中期にpoly(I:C)による母体免疫活性化(MIA)を誘導し,出生後の炎症刺激に対する免疫応答と臓器への影響を検討した。MIA曝露マウスでは出生後の炎症刺激によって,過剰な炎症性サイトカインの誘導と急性肝細胞壊死を認めた。炎症や感染曝露時の細胞の恒常性維持に必要不可欠である小胞体ストレス応答(UPR)について検討を行い,小胞体ストレス関連分子の発現低下を明らかにした。刺激に対する適切なUPRは,細胞の恒常性維持に有利に働くが,過剰あるいは不十分なUPRは細胞の恒常性が維持できず,細胞死を惹起する事が報告されている。このことから,MIAにより出生後の炎症曝露時にUPRが不十分となり,免疫の過剰反応と肝細胞壊死が惹起された可能性が高い。本研究成果は胎生期に過剰な免疫反応に暴露されることが,出生後の炎症性疾患のリスク因子形成に関与する可能性を示すものである。本研究は金沢医科大学動物実験委員会の許可を得て行った。 -
駒田致和近畿大学 理工学部 生命科学科
抄録
抗てんかん薬であるバルプロ酸は胎児期の摂取によって、先天奇形や自閉症などの発達障害を発症するリスクが上昇することが懸念されている。その原因として、大脳皮質の形態形成への関与が報告されている。本研究では特に脳内炎症に着目し、発達障害の発症メカニズムについて解析した。胎児期の感染症の罹患や化学物質の曝露によって脳内でミクログリアの異常な活性化を伴なう炎症が誘発され、神経細胞の増殖や分化、移動、神経投射に影響することが報告されている。バルプロ酸の胎児期曝露においても同様で、大脳皮質において神経新生の異常とミクログリアの活性化が検出された。また、発達段階における行動解析によって、活動量の亢進が検出されたことから、その形態学的異常が神経機能の発達に及ぼす影響を明らかにした。本研究によって、脳内炎症とミクログリアの異常が、バルプロ酸曝露による発達障害発症の原因の一つである可能性が示された。 -
楠山譲二東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
抄録
妊婦の肥満、糖尿病は自身の健康に害悪を及ぼすだけでなく、子に対して糖尿病をはじめとした慢性代謝性疾患の発症リスクを伝播させる悪循環を引き起こす。我々は、妊娠中の運動が母親の肥満による仔の耐糖能機能の低下を劇的に改善できることを見出した。更に妊娠中の運動で胎盤から分泌されるSuperoxide dismutase 3 (SOD3)が母体運動効果の子への情報伝達因子であることを同定した。胎盤における運動とビタミンDシグナルで分泌されるSOD3は、胎児肝臓でAMPK-TETシグナルを活性化し、糖代謝遺伝子プロモーターのDNA脱メチル化により遺伝子発現向上をさせ、肝機能を改善した。更にSOD3は身体活動が活発な妊婦の血清及び胎盤で有意に増加していた。胎盤由来SOD3と仔の肝臓と妊娠期運動誘発性クロストークの発見は、代謝性疾患の次世代伝播を予防するための新たな予防法として有用である。 -
田崎純一花王株式会社 安全性科学研究所
抄録
頭蓋顔面奇形は最も頻発する先天異常の一つである。我々はゼブラフィッシュ初期胚をモデルに、化学物質による頭蓋顔面奇形の発現機序を解析してきた。そしてこれらの奇形が哺乳類と共通した機序で生じることを明らかにした(Liu et al., 2020; Narumi et al., 2020)。そこで異種間で共通して発現する奇形の形態的な対応を詳細に把握するために、頭蓋顔面を含む全細胞イメージングにより初期胚で発現する奇形を3次元かつ網羅的に解析した。本研究では、催奇形性物質(バルプロ酸やワルファリン)を暴露した受精後24-96時間胚の頭部骨格および全細胞核を標識し、CUBIC-L, R+およびEthyl cinnamateで透明化処理をした。ついで光シート顕微鏡(UltraMicroscope Blaze)で観察を行った。これによりゼブラフィッシュ初期胚の三次元奇形イメージングが可能になったので報告する。 -
熊本隆之奥羽大学 薬学部
抄録
過剰肋骨は発生毒性試験で胎児に観察される骨格所見であるが、その成因は不明であり安全性評価の課題となっている。これまで我々はSD系ラットへの5FC投与による薬剤誘発性過剰肋骨モデルラットを構築し、ホメオボックス(Hox)遺伝子の関与およびin vitro実験により細胞毒性に依らないHoxの直接制御を報告してきた(第58-60回大会、Kumamoto et al., FTS, 2020)。しかし、自然発生性との違いは不明であることから、過剰肋骨の自然発生が多いラット系統(Wistar hannover; BrlHan:WIST@(GALAS))と少ない系統(Sprague-Dawley; Crl:CD(SD))の関連するHox群をDNAシーケンスを用いて比較検討し、Hoxa9 exon1とその前方領域に顕著な差を認め、特に複数のHoxの発現制御を介し中軸後方化を司る特定のmiRNAに過剰肋骨発現率と一致する高率の変異を見出した。それに関連するHox mRNA変動とともに報告する。 -
辻本貴行大阪大学歯学研究科顎口腔顔面矯正学教室
抄録
未診断疾患イニシアチブの協力の下、両側性口蓋裂・両眼隔離・心房心室中隔欠損を有する家系を用いてトリオエクソーム解析を行い、Pathogenic な Actin beta(ACTB)変異を同定した。ACTBはBaraitser-Winter syndromeの原因遺伝子であり、全身的な症状に加えて顎顔面口腔領域では唇顎口蓋裂が認められる。しかしながら、ACTBの変異が口唇口蓋裂を引き起こすメカニズムはほとんど解明されていない。Whole-Mount In Situ Hybridizationの結果、ACTBは特に癒合時の口蓋突起上皮に強く発現している事が判明した。そのためMDCK細胞に変異ACTBを強制発現させる事により機能解析を行った。その結果野生型ACTBと比較し、細胞間接着部における局在の違いなどを認めた。これらの事より本研究にて明らかとなった変異は2次口蓋上皮細胞間接着に障害を起こす事により口蓋裂発生の一因となっていることが示唆される。本研究は大阪大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った。 -
道川武紘東邦大学医学部 社会医学講座衛生学分野
抄録
ビタミンAを介したシグナル伝達が横隔膜発生に重要だと言われている。本研究では出生コホート研究データを利用して、妊娠初期のビタミンA摂取と先天性横隔膜ヘルニアとの疫学的関連性を調べた。2011~2014年に全国15地域で参加登録された単胎生産出産妊婦89,658名のデータを解析した。妊娠初期の食物摂取頻度調査票への回答をもとにビタミンA(レチノール活性当量)の1日摂取量を推計した。横隔膜ヘルニアの診断(40症例)は、出生~1か月健診までの診療録情報から抽出した。ビタミンA摂取と横隔膜ヘルニアには負の関連性が示唆された。この関連性は、先行研究と同様に妊娠前肥満度18.4~24.9kg/m2の妊婦群において明瞭で、低摂取群(中央値230μg/day)に対する高摂取群(468μg/day)での横隔膜ヘルニアの調整オッズ比は0.5(95%信頼区間0.2-1.0)であった。本研究は、疫学の視点からビタミンAと横隔膜ヘルニアとを結びつける知見を提供した。 -
早川統子愛知学院大学 心身科学部
抄録
背景: COVID-19の影響で,多くの病院では緊急患者以外の外来を一定期間停止した.先天異常の患児の多くは緊急患者ではないため,言語治療も含めて多くが中止となった.しかし,治療の中断はそれまで得られた言語能力を著しく減少される可能性が危惧された.そこでテレプラクラティス(Telepractice:TP)を実施した. 対象:口蓋裂を有する患者でTPを希望した患者16名.対象期間は,2020年4月27日~5月30日とした. 方法:対象期間中のTPと,対面診察の1ヵ月を抽出し受診状況を比較し,患者の親の満足度を調査した. 結果: TP回数と対面診察の受診回数はほぼ同じであった.TPに対して全ての親が満足していた.考察: COVID-19以外の感染症の予防上でもTPは有用であると考える.TPは先天異常児の非常時の医療サービスのオプションとして有用で,緊急時対応できるよう,本システム構築の備えは必要である.
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休憩休憩(10分間)
- 16:0017:00
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特別講演2
多能性幹細胞を用いた体節形成過程の再現座長:井関 祥子東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野
演者:戎家 美紀European Molecular Biology Laboratory Barcelona抄録
多くの発生生物学者は、初期発生過程をライブで観察・定量したいと思っていますが、哺乳類(特にヒト)の初期胚を用いた実験は、技術的・倫理的に困難です。しかし近年、多能性幹細胞を用いて、初期発生をin vitroで模倣することが可能になってきました。私たちは最近、ヒトiPS細胞から未分節中胚葉を分化誘導し、ヒト体節時計をin vitroで観察・定量することに成功しました。体節時計とは、初期発生時に特異的な遺伝子発現の振動現象で、この振動リズムは体の繰り返し構造(脊椎・肋骨など)を作る基盤です。脊椎肋骨異骨症(Spondylocostal dysostosis: SCD)では、多数の脊椎や肋骨のパターンに乱れが生じるため、体節時計の異常との関連が示唆されてきました。今回、SCDの患者由来iPS細胞を用いてin vitro体節時計を分化誘導したところ、確かに振動の細胞間同期に異常が観察されました。今後はin vitro体節時計を用いて、SCDの新規原因遺伝子の同定を目指しています。さらに面白いことに、ヒトとマウスの体節時計の振動周期に差が見られました(ヒト:5時間、マウス:2時間)。原因を定量的に調べたところ、体節時計の制御因子の生化学反応(タンパク質分解速度、転写・スプライシング・翻訳にかかる時間)が、ヒト細胞ではマウス細胞よりも遅いことがわかりました。体節時計に限らず多くの発生現象は、ヒトではマウスよりも遅いのですが、これらも生化学反応の速さの違いによるものか、知りたいと思っています。参考文献- Matsuda et al., Nature, 580, 124-129 (2020). Recapitulating the human segmentation clock with pluripotent stem cells.- Matsuda et al., Science, 369, 1450-1455 (2020). Species-specific segmentation clock periods are due to differential biochemical reaction speeds.
- 17:0018:00
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オンライン懇親会