【SP-2(O-13)】胎児期のバルプロ酸曝露は脳内炎症を伴なう大脳皮質の形態・機能的異常を誘発する
近畿大学 理工学部 生命科学科
抗てんかん薬であるバルプロ酸は胎児期の摂取によって、先天奇形や自閉症などの発達障害を発症するリスクが上昇することが懸念されている。その原因として、大脳皮質の形態形成への関与が報告されている。本研究では特に脳内炎症に着目し、発達障害の発症メカニズムについて解析した。胎児期の感染症の罹患や化学物質の曝露によって脳内でミクログリアの異常な活性化を伴なう炎症が誘発され、神経細胞の増殖や分化、移動、神経投射に影響することが報告されている。バルプロ酸の胎児期曝露においても同様で、大脳皮質において神経新生の異常とミクログリアの活性化が検出された。また、発達段階における行動解析によって、活動量の亢進が検出されたことから、その形態学的異常が神経機能の発達に及ぼす影響を明らかにした。本研究によって、脳内炎症とミクログリアの異常が、バルプロ酸曝露による発達障害発症の原因の一つである可能性が示された。