大会長挨拶

第61回 日本先天異常学会学術集会 開催にあたって

この度、第61回の大会を担当させていたくことになりました。いわば還暦を迎え、新たな第一歩を踏み出すことになります。
学際性を特徴とする本学会の未来を再確認する意味で、「先天異常学のさらなる高みを目指して―形態・機能研究の統合―」というテーマで準備を進めております。

少しだけ、プログラムの予告をしたいと思います。

特別講演1 半田宏先生はサリドマイドの細胞内のターゲット分子がセレブロンだということを発見され、学会50周年の記念大会でご発表いただきました。
昨年、半田先生はさらにサリドマイドがセレブロンの基質特異性を変化させ、本来ユビキチンリガーゼでは分解されないはずのP63を分解してしまうことを示されました。P63は裂手・裂足・口蓋裂を来すEEC症候群の原因遺伝子であり、まさに薬物による先天異常と遺伝子変異による先天異常をつなぐ輝かしい発見です。

特別講演2 戎家美紀先生は体節という正確な繰り返しパターンのかたちづくりを制御している「体節時計」を試験管内で観察可能であることを示され、脊椎肋骨異形成症の病態をiPS細胞により見事に解明されました。体節時計の異常が、先天異常を惹起するという、全く新しいパラダイムを打ち立てられました。

特別講演3 Ophir Klein先生は小児科・臨床遺伝専門医ですが、先天異常症候群の研究を通じて、精力的に顎顔面発生の基礎生物学的研究を進められています。本学会の目標であるmodel organismを使った基礎研究とヒトの臨床研究の連携を進める示唆に富むご発表になると期待しております

ゼブラフィッシュを用いた形態異常や行動異常の多角的検討に関するシンポジウム、胎児の発生上のパートナーである胎盤の薬物輸送やオルガノイドモデルなど新しい知見に関するシンポジウムも企画しております。

コロナ禍の先行きがまだ見えないことから、今回も前回に続いてオンラインでの開催を計画しております。
オンラインの利点を生かし、オンデマンドでの配信期間を長めに設定し、また3名の先生方に海外の先端の研究成果を伝えていただたいと考えております。
一般演題のセッションも充実させますので、 皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

2021年3月
第61回日本先天異常学会学術集会
大会長 小﨑健次郎

(慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター 教授)



小﨑健次郎教授

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