【ES-2】胎児・新生児期の免疫について
東京医科歯科大学 茨城県小児・周産期地域医療学
免疫系とは非自己である病原体から自己を守るためのシステムであり、大きく自然免疫系と獲得免疫系、細胞性免疫と液性免疫に分けることができる。自然免疫は非特異的であり、病原体かヒト細胞か、という部分を見分けて、排除のために病原体の増殖を抑えたり、炎症を起こしたりすることを主な役割としている。獲得免疫はT細胞とB細胞と抗体により成り立っており、特異的であり、記憶することが可能である。次に病原体が感染しようとしても排除することができるよう精緻な免疫反応を組み立てている。胎児における免疫系を考える上では、個体発生と免疫系の発達について知る必要がある。個体発生が系統発生を繰り返すことは、免疫系についても当てはまる。すなわち妊娠初期には、自然免疫系で対抗するしかなく、その結果、胎内感染では様々な合併症が生じることになるため、異なる病原体によってもTORCHと呼ばれる同じような表現型を取ることになるが、これが胎内感染によるインターフェロンαの過剰によるものであることが、偽TORCH症候群、Aicardi-Goutiers症候群の原因遺伝子の同定により、明らかになった。妊娠後期には、獲得免疫系が発達してくるが、サンプルを得る方法の限界から、その詳細な仕組みは明らかでなかった。しかし近年これについても、少量のサンプルで相当なことがわかるようになっている。その一つの技法が、T細胞の新生能を反映するTRECとB細胞の新生能を反映するKRECの活用である。この2つのバイオマーカーは、原発性免疫不全症に対する新生児スクリーニングにも利用可能であり、日本でも普及しはじめている。