【S1-3】IRUD Beyond J-RDMM-希少・未診断疾患研究へのゼブラフィッシュの挑戦-
1)国立遺伝学研究所 発生遺伝学研究室
2)総合研究大学院大学
2)総合研究大学院大学
ゼブラフィッシュは、(1)世代時間が比較的短く多産である、(2)飼育が容易で維持費用も安い、(3)体外受精し胚操作を容易に行うことができる、(4)胚は透明で胚発生が短期間に進行する、などの特長をもつ。さらに、トランスポゾンを用いたトランスジェニックフィッシュ作製法、CRISPR/Cas9法によるゲノム編集技術等が開発されてきた。このため、ゼブラフィッシュは基礎生物学研究だけでなく、ヒト疾患研究、創薬スクリーニングのための有用なモデル脊椎動物として確立されてきた。最近、データベース構築等による積極的なデータシェアリングを行う体制が構築され、希少疾患・未診断疾患研究を推進する国際連携が進みつつある。その背景には、全ゲノムを対象としたシーケンシング技術を利用して、患者および両親のゲノム解析を行うことにより、希少疾患・未診断疾患の原因候補遺伝子を同定することが可能になってきたことがある。我が国では2015年、IRUD (Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)が発足し、希少疾患・未診断疾患のゲノム解析が始まった。2017年、その遺伝子の機能をモデル生物(ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、線虫、酵母など)を用いて解析するためのJ-RDMM「モデル動物等研究コーディネーティングネットワークによる希少・未診断疾患の病因遺伝子変異候補の機能解析研究」がスタートした。このような疾患関連遺伝子と病態との関連性を、ハイスループット解析が可能なモデル生物を用いて解析することにより、因果関係等が明らかになり、既存の薬のリポジショニングなどにより症状を緩和する治療へとつながることが期待できる。 本講演では、ゼブラフィッシュのモデル脊椎動物としての特長とJ-RDMM計画における役割について紹介する。疾患の患者の情報は医学的倫理に基づいて管理される。