【LS-1】診療で用いるマイクロアレイ染色体検査
神奈川県立こども医療センター 遺伝科
マイクロアレイ染色体検査は、ゲノムのコピー数変化(Copy number variant: CNV)を評価する検査であり、生殖細胞系列の網羅的な遺伝学的検査の一つに位置づけられる。既に海外ではマイクロアレイ染色体検査は臨床検査として定着し、ガイドライン等が公表されている。マイクロアレイ染色体が普及した理由は、知的障害を伴う原因不明の先天異常症例の原因検索として極めて有用だからである。その診断確定率は、通常の染色体検査が3%であるのに対して10-20%にも及ぶ。しかも、その精度は染色体検査のような専門検査技師による職人ワザに依存せず均一に保たれ、プラットフォームを変えることにより、より微細なCNVも、さらにはコピー数変化のないヘテロ接合性の喪失(cnLOH)も検出できることにある。位置的情報は得られないが、先天異常および遺伝性疾患発症にCNVが深く関連していることは明らかで、このマイクロアレイ染色体検査の技術は、臨床検査としては極めて重要な位置を占める。2010年ころまでに医療中での位置づけが成された海外に10年遅れてようやく日本でもこの解析技術が体外診断用医薬品として承認された。 実際に、先天異常の医療でこのマイクロアレイ染色体検査を用いる際には、先天異常ないしは遺伝性疾患の成り立ちは勿論、上述の基本原理も理解しておく必要がある。このセミナーでは、臨床で用いる場合に念頭に置くべき基本事項をまとめた。