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第1日目 – 2021年8月7日 土曜日

9:209:30
開会式
9:3010:30
特別講演1
サリドマイドのターゲットCereblonの発見と展開
- 先天異常発症機序の解明から創薬へ -

演者:半田 宏東京医科大学 ケミカルバイオロジー講座
座長:小﨑 健次郎慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター

抄録

サリドマイド(Thal)は1956年に鎮静催眠剤として販売されたが、妊婦が服用すると生まれてくる子供にアザラシ肢症などの胎芽症発症という薬害を引き起こし、1962年には市場から撤退した。ところが30数年を経て、難治病のハンセン病や血液がんの多発性骨髄腫(MM)への有効性が認められ、今ではThal誘導体も開発され、MMの治療薬として市場に舞い戻った稀有な薬剤である。我々はThalの多彩な薬理作用に着目し、アフィニティビーズ技術を用いて、それら作用に関わるターゲットの分離を試みた。その結果、Cereblon(CRBN)を分離・同定し、CRBNはE3ユビキチン(Ub)リガーゼ複合体のサブユニットである基質受容体として働き、Thal催奇性のターゲットであることを示した。さらに、Thalと第2世代Thal誘導体は、免疫調節剤(immunomodulatory imide drugs: IMiDs)と呼ばれ、がん細胞増殖を阻害し、かつ免疫担当T細胞を活性化する多面的な抗がん作用を発揮する。CRBNはこの抗がん作用のターゲットでもあり、またIMiDsの抗がん作用に関わるCRBNの新規基質タンパク質(ネオ基質)が同定され、ネオ基質がCRBN/IMiD複合体を認識し、選択的に結合し、Ub化・分解されることもわかった。その後、第3世代Thal誘導体が開発され、Thal誘導体の薬理作用が理解され、CRBN/Thal誘導体/ネオ基質複合体の高次構造も解明された。それまでの研究成果から、”CRBN E3 Ligase Modulators (CELMoDs)”および”CRBN-based proteolysis targeting chimras (PROTACs)”と呼ばれる2つの創薬開発の流れが生まれた。Thal主作用の研究を通じて、副作用も同様の機構で発症するのではと推測され、最近、Thal催奇性の原因となるCRBNのネオ基質が同定された。本学会では、これらネオ基質のUb化・分解により誘導されるThal催奇性の発症モデルを紹介したい。
10:3012:00
シンポジウム1
ゼブラフィッシュを用いた先天異常学研究の新潮流

座長:西村 有平三重大学大学院医学系研究科統合薬理学

  1. スマートデバイスを用いたゼブラフィッシュ行動解析法の開発と応用

    西村 有平三重大学大学院医学系研究科統合薬理学

    抄録

    先天異常には様々な遺伝的・環境的要因が関与することが示唆されている。先天異常のメカニズム解明において、小型脊椎動物であるゼブラフィッシュの有用性が世界的に認識されつつある。ゼブラフィッシュは一度の交配で数百の受精卵を得ることができ、遺伝子操作や化合物投与も容易に行うことができる。発生も速く、受精後5日目には主要臓器が形成され、様々な行動レパートリーが出現する。この時期のゼブラフィッシュの体長は3 mm前後であり、96ウェルプレートのウェル内で飼育することができる。従来、ウェル内におけるゼブラフィッシュの形態や機能の評価は、顕微鏡や行動解析に特化した装置が使用されてきた。近年、スマートフォンやタブレットなど、カメラ機能を有するスマートデバイスの普及率が高まっている。これらのデバイスを用いてウェル内のゼブラフィッシュのイメージを取得することができれば、遺伝子操作や化合物投与がゼブラフィッシュの形態や機能に与える影響を簡便に評価することが可能となる。本発表では、我々が開発したスマートデバイスを用いたゼブラフィッシュ行動解析法の概要と、先天異常学研究への応用について報告し、ゼブラフィッシュを用いた先天異常学研究の新たな潮流に関する議論の嚆矢としたい。
  2. 環境要因による胚の細胞品質管理機構の破綻と成体におけるモザイク関連疾患の理解

    石谷 太大阪大学微生物病研究所 生体統御分野

    抄録

    近年の技術革新により、発生期の胚に生じたゲノム・エピゲノム異常細胞(不良細胞)を起源とするモザイクがアルツハイマー病や自閉症などの神経疾患や糖尿病や高血圧などの成人疾患の発症に関与することや、その異常が次世代に継承され疾患を引き起こすケースもあることが明らかになりつつある。これらの事実は、胚に生じた不良細胞の出現・活動の抑制が将来の疾患予防に重要であることを示唆する。我々は最近、ゼブラフィッシュイメージング解析により、動物胚が突発的に生じた種々の不良細胞を排除・抑制する細胞品質管理機構を備えていることを発見した。この細胞品質管理機構においては、隣接正常細胞が細胞間コミュニケーションを介して不良細胞の出現を感知し、不良細胞に細胞死を促すことで胚組織の恒常性を維持する。また、哺乳類胚においても同様の細胞品質管理機構が機能することがわかりつつある。興味深いことに、ゼブラフィッシュ胚に特定の環境変化を与えると、細胞品質管理機構が破綻して不良細胞が蓄積し、モザイク状の異常を生じる。したがって、ヒト成体に見られる変異モザイクの一部は、おそらく、この機構による除去を回避した不良細胞によって発生した、あるいは、除去機構の破綻の結果として生じた、と推測される。しかしながら、胚に不良細胞が出現するメカニズムや、胚に生じた不良細胞がモザイクを形成し疾患を引き起こすプロセスも不明である。本シンポジウムでは、ゼブラフィッシュをモデルとした、胚の細胞品質管理機構と、その環境因子・遺伝的因子による破綻と疾患の関連についての研究を紹介する。また、この研究に加えて、ゼブラフィッシュをモデルとしたヒト希少疾患原因遺伝子の解析の成果についてもご紹介したい。
  3. IRUD Beyond J-RDMM-希少・未診断疾患研究へのゼブラフィッシュの挑戦-

    川上 浩一国立遺伝学研究所 発生遺伝学研究室

    抄録

    ゼブラフィッシュは、(1)世代時間が比較的短く多産である、(2)飼育が容易で維持費用も安い、(3)体外受精し胚操作を容易に行うことができる、(4)胚は透明で胚発生が短期間に進行する、などの特長をもつ。さらに、トランスポゾンを用いたトランスジェニックフィッシュ作製法、CRISPR/Cas9法によるゲノム編集技術等が開発されてきた。このため、ゼブラフィッシュは基礎生物学研究だけでなく、ヒト疾患研究、創薬スクリーニングのための有用なモデル脊椎動物として確立されてきた。最近、データベース構築等による積極的なデータシェアリングを行う体制が構築され、希少疾患・未診断疾患研究を推進する国際連携が進みつつある。その背景には、全ゲノムを対象としたシーケンシング技術を利用して、患者および両親のゲノム解析を行うことにより、希少疾患・未診断疾患の原因候補遺伝子を同定することが可能になってきたことがある。我が国では2015年、IRUD (Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)が発足し、希少疾患・未診断疾患のゲノム解析が始まった。2017年、その遺伝子の機能をモデル生物(ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、線虫、酵母など)を用いて解析するためのJ-RDMM「モデル動物等研究コーディネーティングネットワークによる希少・未診断疾患の病因遺伝子変異候補の機能解析研究」がスタートした。このような疾患関連遺伝子と病態との関連性を、ハイスループット解析が可能なモデル生物を用いて解析することにより、因果関係等が明らかになり、既存の薬のリポジショニングなどにより症状を緩和する治療へとつながることが期待できる。 本講演では、ゼブラフィッシュのモデル脊椎動物としての特長とJ-RDMM計画における役割について紹介する。疾患の患者の情報は医学的倫理に基づいて管理される。
12:0013:00
企業セミナー
診療で用いるマイクロアレイ染色体検査

演者:黒澤 健司神奈川県立こども医療センター遺伝科

抄録

マイクロアレイ染色体検査は、ゲノムのコピー数変化(Copy number variant: CNV)を評価する検査であり、生殖細胞系列の網羅的な遺伝学的検査の一つに位置づけられる。既に海外ではマイクロアレイ染色体検査は臨床検査として定着し、ガイドライン等が公表されている。マイクロアレイ染色体が普及した理由は、知的障害を伴う原因不明の先天異常症例の原因検索として極めて有用だからである。その診断確定率は、通常の染色体検査が3%であるのに対して10-20%にも及ぶ。しかも、その精度は染色体検査のような専門検査技師による職人ワザに依存せず均一に保たれ、プラットフォームを変えることにより、より微細なCNVも、さらにはコピー数変化のないヘテロ接合性の喪失(cnLOH)も検出できることにある。位置的情報は得られないが、先天異常および遺伝性疾患発症にCNVが深く関連していることは明らかで、このマイクロアレイ染色体検査の技術は、臨床検査としては極めて重要な位置を占める。2010年ころまでに医療中での位置づけが成された海外に10年遅れてようやく日本でもこの解析技術が体外診断用医薬品として承認された。 実際に、先天異常の医療でこのマイクロアレイ染色体検査を用いる際には、先天異常ないしは遺伝性疾患の成り立ちは勿論、上述の基本原理も理解しておく必要がある。このセミナーでは、臨床で用いる場合に念頭に置くべき基本事項をまとめた。

休憩(10分間)

13:1013:45
評議委員会・総会
13:4514:15
奨励賞受賞講演
座長:大谷 浩島根大学医学部
  1. ヒト胚子期における気管支樹のvariationの検討

    藤井 瀬菜京都大学 医学研究科 人間健康科学系専攻

    抄録

    【背景・目的】多くの成人肺の解剖学的研究が、区域気管支の分岐構造に関するvariationを報告している。この形態学的差異が生じる時期は明らかでない。本研究は、ヒト胚子の気管支樹の形態変化を観察し、気管支のvariationが生じる時期を検討した。
    【対象・方法】京都コレクション保有のカーネギーステージ(CS)15~23のヒト胚子標本計48体を対象とした。全個体の位相 CT 画像を取得し、画像処理ソフトウェア Amira を用いて気管支樹を抽出し立体像を作成した。
    【結果】CS15~23 において、気管と葉気管支の形態に個体差は認めなかった。葉気管支はCS15, 16にて形成されていた。左右の一次気管支芽上の対称な位置に右中葉と左上葉を形成している個体と、さらに右上葉を形成している個体を認めた。区域気管支と亜区域気管支は、CS17~19 にかけて形成が進んでおり、同一ステージの個体間にて形成の程度にばらつきが生じていた。CS20~23の気管支樹における区域気管支の形態として、左右の上葉においてそれぞれ4種類、右中葉と左右下葉ではそれぞれ2種類の計14種を同定した。
    【考察】観察した全個体にて、気管と葉気管支は成人の気管支樹と同様の構造を示した。この結果は、葉気管支までは個体に関わらず典型的な構造を形成することを示唆している。CS15~19の気管支樹の観察から、葉気管支は一定の順序で形成される可能性があること、区域気管支の形成速度には個体差があることが明らかになった。さらに、CS20~23で同定した区域気管支の形態は、成人の気管支においても同様の形態が報告されていた。この結果は、成人の気管支樹の形態のvariationが胚子期において決定し、生涯にわたって継続する可能性を示唆している。本研究は医の倫理委員会で承認されている。(R0316)
  2. トランスクリプトームおよび全ゲノム解析を用いたキメラ遺伝子形成による先天性遺伝性疾患発症機序の解明

    山田 茉未子慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター

    抄録

    腫瘍学の分野においてキメラ遺伝子形成は疾患発症機序として確立した概念となっている。キメラ遺伝子は逆位、欠失、重複、転座などの染色体異常により2つ以上の異なる遺伝子やその一部が融合して生じた遺伝子のことである。一方、先天性遺伝性疾患の発症機序の一つとしてゲノム構造異常は重要な位置を占めるが、ゲノム構造異常に基づくキメラ遺伝子形成やその影響について十分な検討はなされていない。我々は次世代シーケンサーを用いた網羅的ゲノム変異解析が一般化するなかで診断率向上のために打破すべき壁ともいえるゲノム構造異常の検出とそれにより引き起こされるキメラ遺伝子が形成されている患者の同定を目指した。標準的なエクソーム解析およびトランスクリプトーム解析で診断に至っていなかった患者56名に対して、がんゲノム領域で開発されたキメラ形成を検出するためのアルゴリズムChimPipeを適用し、2名の患者において診断確定に至った。1名は臨床所見からMowat-Wilson症候群が疑われているにも関わらず従来の検出手法で診断ができなかった患者においてZEB2-GTDC1融合遺伝子が形成されていることを検出した。全ゲノム解析を並行して実施し、ZEB2GTDC1の両遺伝子を含む欠失を確認できた。他方は精神発達遅滞を伴う先天異常症候群の患者であり、カリウムチャネル構成因子KCNK9-TRAPPC9融合遺伝子が形成されていた。全ゲノム解析を並行して実施し、患者にKCNK9TRAPPC9の両遺伝子に及ぶ欠失を確認できた。本研究により、生殖細胞系列変異による先天遺伝性疾患の発症過程においてもキメラ遺伝子形成が重要な役割を果たすことが示された。今後もトランスクリプトーム解析や全ゲノム解析のような新たな解析技術を用いることで先天性遺伝性疾患の疾患機序の解明に貢献したい。
  3. マウス胎仔の気管および食道におけるinterkinetic nuclear migrationの器官間・部位間の差の解析

    Regassa Dereje Getachew島根大学 医学部 解剖学講座 発生生物学

    抄録

    INM is the apicobasal (AB) cell polarity-based oscillatory movement of epithelial cell nuclei in synchrony with the cell cycle, and is suggested to be involved in of the development of epithelial tubular organs.  Here, we investigated inter-organ (trachea vs. esophagus) and intra-organ regional (ventral vs. dorsal) differences in the INM mode in the tracheal and esophageal epithelia of the mouse embryo. The pregnant mice received a single intraperitoneal injection of 5-ethynyl-2’-deoxyuridine (EdU) at embryonic day (E) 11.5 and E12.5 and embryos were obtained 1, 4, 6, 8 and 12 hr later. The labeled cell nuclei distribution along the AB axis was chronologically analyzed in the total, ventral and dorsal sides of the epithelia. The percentage distribution of the nuclei population was represented by histogram and the chronological change was analyzed statistically using multi-dimensional scaling. The inter-organ comparison of the INM mode during E11.5-E12.0, but not E12.5-E13.0, showed a significant difference. During E11.5-E12.0 the trachea, but not the esophagus, showed a significant difference between ventral and dorsal sides. During E12.5-E13.0 neither organ showed regional differences. These findings indicate the existence of different modes of INM between the two organs which derive from the common anterior foregut as well as between the dorsal and ventral sides of the trachea. These differences in the INM mode may be related with the later differential organogenesis/histogenesis between the two organs as well as between the dorsal and ventral sides of the trachea.
14:2015:50
一般優秀演題・プレナリー
座長:

 井関 祥子東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野
八田 稔久金沢医科大学一般教育機構解剖学1

  1. 母体免疫活性化の曝露による出生後の小胞体ストレス応答不良と炎症に対する感受性亢進の誘導

    清水陽
    金沢医科大学 小児科学

    抄録

    本研究では妊娠中期にpoly(I:C)による母体免疫活性化(MIA)を誘導し,出生後の炎症刺激に対する免疫応答と臓器への影響を検討した。MIA曝露マウスでは出生後の炎症刺激によって,過剰な炎症性サイトカインの誘導と急性肝細胞壊死を認めた。炎症や感染曝露時の細胞の恒常性維持に必要不可欠である小胞体ストレス応答(UPR)について検討を行い,小胞体ストレス関連分子の発現低下を明らかにした。刺激に対する適切なUPRは,細胞の恒常性維持に有利に働くが,過剰あるいは不十分なUPRは細胞の恒常性が維持できず,細胞死を惹起する事が報告されている。このことから,MIAにより出生後の炎症曝露時にUPRが不十分となり,免疫の過剰反応と肝細胞壊死が惹起された可能性が高い。本研究成果は胎生期に過剰な免疫反応に暴露されることが,出生後の炎症性疾患のリスク因子形成に関与する可能性を示すものである。本研究は金沢医科大学動物実験委員会の許可を得て行った。
  2. 胎児期のバルプロ酸曝露は脳内炎症を伴なう大脳皮質の形態・機能的異常を誘発する

    駒田致和
    近畿大学 理工学部 生命科学科

    抄録

    抗てんかん薬であるバルプロ酸は胎児期の摂取によって、先天奇形や自閉症などの発達障害を発症するリスクが上昇することが懸念されている。その原因として、大脳皮質の形態形成への関与が報告されている。本研究では特に脳内炎症に着目し、発達障害の発症メカニズムについて解析した。胎児期の感染症の罹患や化学物質の曝露によって脳内でミクログリアの異常な活性化を伴なう炎症が誘発され、神経細胞の増殖や分化、移動、神経投射に影響することが報告されている。バルプロ酸の胎児期曝露においても同様で、大脳皮質において神経新生の異常とミクログリアの活性化が検出された。また、発達段階における行動解析によって、活動量の亢進が検出されたことから、その形態学的異常が神経機能の発達に及ぼす影響を明らかにした。本研究によって、脳内炎症とミクログリアの異常が、バルプロ酸曝露による発達障害発症の原因の一つである可能性が示された。
  3. 胎盤由来SOD3を介した妊娠期運動による肥満予防効果の次世代伝播機構

    楠山譲二
    東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部

    抄録

    妊婦の肥満、糖尿病は自身の健康に害悪を及ぼすだけでなく、子に対して糖尿病をはじめとした慢性代謝性疾患の発症リスクを伝播させる悪循環を引き起こす。我々は、妊娠中の運動が母親の肥満による仔の耐糖能機能の低下を劇的に改善できることを見出した。更に妊娠中の運動で胎盤から分泌されるSuperoxide dismutase 3 (SOD3)が母体運動効果の子への情報伝達因子であることを同定した。胎盤における運動とビタミンDシグナルで分泌されるSOD3は、胎児肝臓でAMPK-TETシグナルを活性化し、糖代謝遺伝子プロモーターのDNA脱メチル化により遺伝子発現向上をさせ、肝機能を改善した。更にSOD3は身体活動が活発な妊婦の血清及び胎盤で有意に増加していた。胎盤由来SOD3と仔の肝臓と妊娠期運動誘発性クロストークの発見は、代謝性疾患の次世代伝播を予防するための新たな予防法として有用である。
  4. 光シート顕微鏡を用いたゼブラフィッシュ初期胚の頭蓋顔面奇形のイメージング

    田崎純一
    花王株式会社 安全性科学研究所

    抄録

    頭蓋顔面奇形は最も頻発する先天異常の一つである。我々はゼブラフィッシュ初期胚をモデルに、化学物質による頭蓋顔面奇形の発現機序を解析してきた。そしてこれらの奇形が哺乳類と共通した機序で生じることを明らかにした(Liu et al., 2020; Narumi et al., 2020)。そこで異種間で共通して発現する奇形の形態的な対応を詳細に把握するために、頭蓋顔面を含む全細胞イメージングにより初期胚で発現する奇形を3次元かつ網羅的に解析した。本研究では、催奇形性物質(バルプロ酸やワルファリン)を暴露した受精後24-96時間胚の頭部骨格および全細胞核を標識し、CUBIC-L, R+およびEthyl cinnamateで透明化処理をした。ついで光シート顕微鏡(UltraMicroscope Blaze)で観察を行った。これによりゼブラフィッシュ初期胚の三次元奇形イメージングが可能になったので報告する。
  5. 系統差に着目した過剰肋骨のホメオボックス遺伝子を中心とした遺伝学的解析

    熊本隆之
    奥羽大学 薬学部

    抄録

    過剰肋骨は発生毒性試験で胎児に観察される骨格所見であるが、その成因は不明であり安全性評価の課題となっている。これまで我々はSD系ラットへの5FC投与による薬剤誘発性過剰肋骨モデルラットを構築し、ホメオボックス(Hox)遺伝子の関与およびin vitro実験により細胞毒性に依らないHoxの直接制御を報告してきた(第58-60回大会、Kumamoto et al., FTS, 2020)。しかし、自然発生性との違いは不明であることから、過剰肋骨の自然発生が多いラット系統(Wistar hannover; BrlHan:WIST@(GALAS))と少ない系統(Sprague-Dawley; Crl:CD(SD))の関連するHox群をDNAシーケンスを用いて比較検討し、Hoxa9 exon1とその前方領域に顕著な差を認め、特に複数のHoxの発現制御を介し中軸後方化を司る特定のmiRNAに過剰肋骨発現率と一致する高率の変異を見出した。それに関連するHox mRNA変動とともに報告する。
  6. Baraitser-Winter syndrome を引き起こすACTBの新規変異同定と機能解析

    辻本貴行
    大阪大学歯学研究科顎口腔顔面矯正学教室

    抄録

    未診断疾患イニシアチブの協力の下、両側性口蓋裂・両眼隔離・心房心室中隔欠損を有する家系を用いてトリオエクソーム解析を行い、Pathogenic な Actin beta(ACTB)変異を同定した。ACTBはBaraitser-Winter syndromeの原因遺伝子であり、全身的な症状に加えて顎顔面口腔領域では唇顎口蓋裂が認められる。しかしながら、ACTBの変異が口唇口蓋裂を引き起こすメカニズムはほとんど解明されていない。Whole-Mount In Situ Hybridizationの結果、ACTBは特に癒合時の口蓋突起上皮に強く発現している事が判明した。そのためMDCK細胞に変異ACTBを強制発現させる事により機能解析を行った。その結果野生型ACTBと比較し、細胞間接着部における局在の違いなどを認めた。これらの事より本研究にて明らかとなった変異は2次口蓋上皮細胞間接着に障害を起こす事により口蓋裂発生の一因となっていることが示唆される。本研究は大阪大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った。
  7. ビタミンA摂取と先天性横隔膜ヘルニアにかかる疫学的検討: 子どもの健康と環境に関する全国調査より

    道川武紘
    東邦大学医学部 社会医学講座衛生学分野

    抄録

    ビタミンAを介したシグナル伝達が横隔膜発生に重要だと言われている。本研究では出生コホート研究データを利用して、妊娠初期のビタミンA摂取と先天性横隔膜ヘルニアとの疫学的関連性を調べた。2011~2014年に全国15地域で参加登録された単胎生産出産妊婦89,658名のデータを解析した。妊娠初期の食物摂取頻度調査票への回答をもとにビタミンA(レチノール活性当量)の1日摂取量を推計した。横隔膜ヘルニアの診断(40症例)は、出生~1か月健診までの診療録情報から抽出した。ビタミンA摂取と横隔膜ヘルニアには負の関連性が示唆された。この関連性は、先行研究と同様に妊娠前肥満度18.4~24.9kg/m2の妊婦群において明瞭で、低摂取群(中央値230μg/day)に対する高摂取群(468μg/day)での横隔膜ヘルニアの調整オッズ比は0.5(95%信頼区間0.2-1.0)であった。本研究は、疫学の視点からビタミンAと横隔膜ヘルニアとを結びつける知見を提供した。
  8. 先天異常治療におけるCOVID-19による外来閉鎖時の対策 ―口蓋裂患者の言語治療―

    早川統子
    愛知学院大学 心身科学部

    抄録

    背景: COVID-19の影響で,多くの病院では緊急患者以外の外来を一定期間停止した.先天異常の患児の多くは緊急患者ではないため,言語治療も含めて多くが中止となった.しかし,治療の中断はそれまで得られた言語能力を著しく減少される可能性が危惧された.そこでテレプラクラティス(Telepractice:TP)を実施した. 対象:口蓋裂を有する患者でTPを希望した患者16名.対象期間は,2020年4月27日~5月30日とした. 方法:対象期間中のTPと,対面診察の1ヵ月を抽出し受診状況を比較し,患者の親の満足度を調査した. 結果: TP回数と対面診察の受診回数はほぼ同じであった.TPに対して全ての親が満足していた.考察: COVID-19以外の感染症の予防上でもTPは有用であると考える.TPは先天異常児の非常時の医療サービスのオプションとして有用で,緊急時対応できるよう,本システム構築の備えは必要である.

休憩(10分間)

16:0017:00
特別講演2
多能性幹細胞を用いた体節形成過程の再現

座長:井関 祥子東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野
演者:戎家 美紀European Molecular Biology Laboratory Barcelona

抄録

多くの発生生物学者は、初期発生過程をライブで観察・定量したいと思っていますが、哺乳類(特にヒト)の初期胚を用いた実験は、技術的・倫理的に困難です。しかし近年、多能性幹細胞を用いて、初期発生をin vitroで模倣することが可能になってきました。私たちは最近、ヒトiPS細胞から未分節中胚葉を分化誘導し、ヒト体節時計をin vitroで観察・定量することに成功しました。体節時計とは、初期発生時に特異的な遺伝子発現の振動現象で、この振動リズムは体の繰り返し構造(脊椎・肋骨など)を作る基盤です。脊椎肋骨異骨症(Spondylocostal dysostosis: SCD)では、多数の脊椎や肋骨のパターンに乱れが生じるため、体節時計の異常との関連が示唆されてきました。今回、SCDの患者由来iPS細胞を用いてin vitro体節時計を分化誘導したところ、確かに振動の細胞間同期に異常が観察されました。今後はin vitro体節時計を用いて、SCDの新規原因遺伝子の同定を目指しています。さらに面白いことに、ヒトとマウスの体節時計の振動周期に差が見られました(ヒト:5時間、マウス:2時間)。原因を定量的に調べたところ、体節時計の制御因子の生化学反応(タンパク質分解速度、転写・スプライシング・翻訳にかかる時間)が、ヒト細胞ではマウス細胞よりも遅いことがわかりました。体節時計に限らず多くの発生現象は、ヒトではマウスよりも遅いのですが、これらも生化学反応の速さの違いによるものか、知りたいと思っています。参考文献- Matsuda et al., Nature, 580, 124-129 (2020). Recapitulating the human segmentation clock with pluripotent stem cells.- Matsuda et al., Science, 369, 1450-1455 (2020). Species-specific segmentation clock periods are due to differential biochemical reaction speeds.
17:0018:00
オンライン懇親会


第2日目 – 2021年8月8日 日曜日

9:3011:00
シンポジウム2
「胎盤と先天異常」
座長:登美 斉俊慶應義塾大学薬学部薬学科薬剤学
  1. ヒト胎盤透過性の定量予測に向けたアプローチ

    登美 斉俊慶應義塾大学薬学部薬学科薬剤学

    抄録

    妊婦や胎児への薬物治療において、胎盤透過性は考慮すべき重要な指標であるが、ヒトで臍帯血中濃度が実測可能な薬物は限られる。そのため、代替手法からヒト胎盤透過性を高精度に予測する方法論の確立が不可欠である。出産後のヒト胎盤を用いたex vivo胎盤灌流による透過性評価は、実組織を用いた解析系として有用であり、報告数も多い。一方、一部薬物では妊婦で得た胎児血:母体血薬物濃度比(F:M ratio)とex vivo胎盤灌流でのF:M ratioが乖離するため信頼性に欠け、十分に活用されていない。我々は、ex vivo灌流実験で得られた薬物濃度推移から薬物動態モデルを構築し、ex vivoでは実施不可能な長時間の濃度推移をin silicoシミュレーションすることで、妊婦で得たF:M ratioを再現することに成功した。つまり、灌流可能な時間には限界があり、一部の薬物では定常状態に到達していない状態でF:M ratioを評価していることが不一致の主要因であるが、薬物動態モデルの併用で定常状態でのF:M ratioを推定することで克服できることを明らかにした。ラットなどげっ歯類を用いた胎盤透過性評価は殆どの薬物で実施されているが、種差の問題があり、こちらも十分に活用されていない。我々は、ラットにおけるF:M ratioはヒトに比べて低い傾向にあること、そしてこの種差の一因はタンパク結合率の種差であり、遊離形薬物のF:M ratioを指標とすることで克服できることを突き止めた。また、胎盤関門に発現する薬物トランスポーターの発現量種差にも着目し、ヒトにしか発現しないトランスポーターや、ラットではヒトの数百倍発現が高いトランスポーターについて、それらが薬物の胎盤透過に及ぼす影響を解析している。代替手法で得たデータから、定常状態における遊離形薬物のF:M ratioを精度高く予測可能することで、薬物のヒト胎児作用予測をより精緻なものとすることを目指していきたい。
  2. 胎盤発生のモデルシステムの展望 ―これまでとこれから―
    堀井 真理子Department of Pathology,
    University of California San Diego

    抄録

    従来、胎盤発生の分子細胞学的研究は、ヒト胎盤幹細胞が樹立困難だったこともあり、主にマウスの胎盤幹細胞や腫瘍由来の不死化細胞株などが使用されてきた。しかし、マウスとヒトでは胎盤の形態や着床、遺伝子・タンパクの発現パターンが異なる点、および癌では正常胎盤発生とは異なる点などが問題視され、ヒト胎盤初期発生の研究には使用しにくいことが難点であった。そこで、近年ではヒト多能性幹細胞を使ってトロホブラストの分化モデルでの研究が進められるようになり、正常妊娠だけでなく、妊娠合併症モデルの研究も可能になった。患者由来の細胞で検討を加えることで、遺伝子の構造的変化やエピジェネティックな変化、インプリンティングの異常などが原因によると考えられる妊娠合併症の分子細胞学的解析が可能となってきている。しかし、これらの研究で使われているトロホブラスト分化のプロトコルでは、トロホブラスト幹細胞から胎盤構成細胞への分化の際、最終分化した絨毛外栄養膜細胞と合胞体栄養膜細胞が混在して培養されてしまうという欠点が内在していた。2018年、東北大学の岡江、有馬らにより、胚盤胞と妊娠初期胎盤の初代培養細胞からヒト胎盤幹細胞(hTSC)の樹立が報告され、それ以降ヒト胎盤分化の研究に大きく貢献している。今回、正常妊娠における胎盤の初期発生、合併症妊娠における異常の分子細胞学的機序の考察などについて、ヒト胎盤幹細胞を使用した我々の研究を紹介する。胎盤の初期発生の機序や病態発生機序の解明を目指している。
  3. 双胎の胎盤異常と先天異常と胎児治療
    左合 治彦国立成育医療研究センター、
    周産期・母性診療センター

    抄録

    双胎妊娠は単胎妊娠に比べ児の先天異常の発生頻度が高く,双胎妊娠でも二絨毛膜双胎に比べ,一絨毛膜双胎において発生頻度が高い.一絨毛膜双胎ではtwinningによる異常(結合双胎,無心体双胎など)や胎盤吻合血管による血流異常(心奇形,小頭症,水頭症,小腸閉鎖など)など一絨毛膜双胎に特有な病態があるためである.一絨毛膜双胎では二児で一つの胎盤を共有するために胎盤には両児間の吻合血管が存在する.胎盤吻合血管を介して両児間の慢性的な血流不均衡を来したのが双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome:TTTS)である.一絨毛膜双胎の約10%にみられ,児の発育不全,心不全,脳神経障害,早産,子宮内死亡などを来す極めて予後不良な疾患である.TTTSに対しては胎児鏡下レーザー凝固術(fetoscopic laser photocoagulation :FLP)という胎児治療が行われる.子宮内へ胎児鏡を挿入して病因である胎盤血管をレーザー凝固して血流不均衡を改善する治療法である.2004年ランダム化比較試験で有効な治療法であることが証明されTTTSに対する第一選択治療法となり,本邦でも良好な治療成績が示され2012年に胎児治療法として初めて保険収載された.本邦のFLP施行例は2018年に2000例を超え,年間約200例が施行されている.治療成績は少しずつ向上しており,少なくとも1児生存率は95%以上に達し,長期予後は3歳時での脳神経障害は8.5%であった.胎盤吻合血管による血流異常が胎児治療によって子宮内で改善できる可能性がある.妊娠中期以降に発症するTTTSに起因する脳神経異常の発症を防ぐ可能性は示唆されている.以前は実験的・先進的治療であったが今や標準的治療となったTTTSに対するFLPを通して,双胎の胎盤異常と先天異常について胎児治療の観点から考察する.

11:0012:00
特別講演3
Developmental cues as a foundation for therapies:
From tooth to guts
座長:黒坂 寛大阪大学歯学部附属病院矯正科
演者:Ophir Klein
Human Genetics and Craniofacial Biology,
University of California, San Francisco

抄録

Birth defects are a principal focus for clinical geneticists. Currently, there are very few nonsurgical interventions available for structural birth defects, and fundamental studies in developmental biology offer hope for future therapies. More generally, a central challenge facing medicine today is the development of strategies for organ regeneration and repair, and an important next step for regenerative medicine is to understand the mechanisms by which mammals naturally use stem cells to renew and heal tissues. I will present data from our recent work focusing on stem cells in teeth, the oral mucosa, and the gastrointestinal tract as examples of organs that undergo constant renewal. First, I will discuss our studies of the continuously growing rodent incisor, which provides a model that allows for powerful integration of investigations into how stem cells function, how they evolved, and how their behaviors are coordinated across tissues. Second, I will present recent work from our lab examining the identity of stem cells in the lining of the mouth, and third, I will discuss the response of gastrointestinal epithelial stem cells to injury. Finally, I will integrate into the talk some thoughts about the potential implications of progress in developmental and stem cell biology for the fields of clinical genetics and teratology.
12:0013:00
企業セミナー
胎児画像診断による出生前遺伝子解析の適応
演者:夫 律子
クリフム夫律子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所
胎児診断センター 胎児脳センター

抄録

NIPT、PGT-A、分子遺伝学の急速な発展により出生前診断においても遺伝学的知識が要求されるようになってきた。諸外国では出生前の染色体マイクロアレイ(CMA)検査や遺伝子検査も多く報告されるようになった。当院では倫理委員会の承認を得て胎児超音波画像診断・絨毛・羊水検体からデータ分析し、選択例でCMA, TES(ターゲットエクソーム検査)を行っている。現在では6,704遺伝子のパネルを用いその中から各領域別に遺伝子群を選択し表現型異常にマッチした遺伝子群を解析対象とすることにより網羅的解析ではなく選択的遺伝学的解析を可能としている。またシークエンスデータをもとにXHMMアルゴリズムを用いてコピー数異常の有無も解析している。当院ではTESを行った症例のうち病的陽性率は33%であり、出生後に表現形異常のため遺伝子検査をおこなう小児例と比較しても検出率は高い。これは、胎児期において詳細超音波検査で胎児形態を正確に分類評価することにより、出生前遺伝子検査の適応を絞っているからであろう。また,大脳皮質形成異常に関する遺伝子変異は出生後の報告は多くなってきているが、出生前の画像診断との関係はまだ明らかになっていないものも多い。当院では胎児脳センターを設立して詳細な神経超音波検査により妊娠18-21週で大脳皮質形成異常を予測できる超音波マーカーを考案し、それらと関連した遺伝子変異の診断を行っている。mTOR系関連遺伝子など、脳発達に重要な遺伝子変異などが多く見つかってきているが、これらの遺伝子解析はすべて詳細な脳神経系超音波診断と密接に関係している。今回の講演では、種々のデータ解析とともに出生前遺伝子解析の適応についての詳細を講演の中に盛り込んでわかりやすく解説したい。

休憩(10分間)

13:1015:10
シンポジウム 妊娠と薬剤
【第1部】
日本におけるTeratology Information servicesの
データベースを用いた研究成果と課題
ドンペリドンを例として

座長:
村島 温子国立成育医療研究センター
林 昌洋虎の門病院

  1. 妊娠と薬情報センターのこれまでとこれから~15周年を迎えて~

    村島 温子国立成育医療研究センター

    抄録

    妊娠と薬情報センター(JDIIP)は、妊娠中の薬物使用に不安を感じている女性に対して、薬物の安全性に関する情報を提供することと、相談事例に基づく疫学調査によるエビデンスの創出を目的として、2005年に厚生労働省の事業として設立された。JDIIPは設立以来、妊娠中の医薬品の適正使用を推進することで、母児の健康に多くの貢献をしてきた。カウンセリングが妊娠中に薬物を使用している女性の不安を軽減するために有効であること、妊娠継続の意思を後押し出産まで導いたということを客観的に示すこともできている。47都道府県の拠点病院で構成されたネットワークは、日本全国の女性への情報提供に重要な役割を果たしている。 安全性を解析したい薬剤への曝露事例は稀であることが多いため、質の高いエビデンスを得るためには、国内外の催奇形情報サービスのネットワークが必要である。 その一環として、JDIIPでは、JDIIPと虎の門病院のデータを組み合わせたエビデンスの作成に取り組んでいるが、ドンペリドンの安全性に関する論文はその典型的な例である。JDIIPは、薬剤師や医師の教育、各医学会の臨床診療ガイドラインの作成に貢献している。2016年からは、厚生労働省からの委託を受け、添付文書改訂に関する提言書作成も行っている。免疫抑制剤は、そのプロジェクトの最初の成果であった。今後の課題としては、相談したい人が気軽に相談できる環境を作ること、安全性の根拠を作りやすい仕組みを作ること、組織の継続的な発展を目指すことなどが挙げられる。
  2. 虎の門病院/妊娠と薬情報センター統合データベースからのエビデンス構築について

    後藤 美賀子国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センター

    抄録

    本邦における2大Teratology Information services:TISは虎の門病院(1988年開設)と国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センター(2005年に開設)である。両TISは、妊娠と薬に関する相談外来の業務を行なってきた。相談に際して必要となる情報は、ヒトの妊婦の曝露例を元とした疫学研究であるが、実際は十分な疫学研究が存在する薬剤は限られているのが現状である。両TISは、相談業務のみならず、相談症例データベースの構築に務めてきた。データベースには同意が得られた妊婦に対して、妊娠中に使用したすべての薬剤と曝露時期などの情報をはじめ、出産時の児の情報や先天異常の情報も含まれている。日本医療研究開発機構(AMED)委託研究費「妊婦及び授乳婦への薬物投与に関するリスク・ベネフィットに関する研究」(2017-2020)において、各施設の相談症例データベースを活用し、妊娠中の薬剤の安全性に関するエビデンスを構築すべく、症例数を増やすことを目的として両データベースの統合をおこなった。統合データベースの中でn数が多く、かつ研究開始時点で十分なエビデンスがない薬剤を選定し、研究対象薬剤とした。両施設でそれぞれ独自のフォーマットを用いており、共通する項目と異なる項目があり、共通項目においてもコード化が異なるなどの違いがみられた。本シンポジウムにおいては、統合データベースを活かした妊娠中の薬剤の安全性に関するエビデンスの確立について実際の例を紹介するとともに、今後当該分野におけるエビデンスを確立していくために必要な情報収集の在り方を論じたい。
  3. ドンペリドンの催奇形リスクに関するコホート研究

    菱沼 加代子虎の門病院

    抄録

    ドンペリドンは吐き気、嘔吐などの胃腸症状の治療に広く使用されている。生殖発生毒性試験において高用量投与で催奇形性が観察されているため添付文書では妊婦又は妊娠している可能性のある女性への使用は禁忌であるが、妊娠と気づかず胃腸症状に対して処方された女性が服薬後に胎児への影響を心配する症例が少なくない。ドンペリドンの催奇形リスクに関しては人では小規模コホート研究が報告されているのみであった。
    本研究では、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」又は虎の門病院「妊娠と薬相談外来」にてカウンセリングを受けた症例の結合データベースを用いて、妊娠第1三半期のドンペリドン曝露による催奇形リスクを評価した。選択基準に合致したドンペリドン服用例は519人であり、対照群は非催奇形薬剤服用例1673人とした。単生児における大奇形の発生率(95%信頼区間[CI])は、ドンペリドン群で2.9% (14/485、95%CI: 1.6-4.8)、対照群で1.7% (27/1554、95%CI: 1.1-2.5) であり、ドンペリドン群と対照群の間で大奇形発生率に有意差は見られなかった (調整後オッズ比: 1.86 [95%CI: 0.73-4.70]、P=0.191、多変量ロジスティック回帰分析)。なお、妊婦の制吐薬としても汎用されるメトクロプラミド服用例241人を参照群として対照群と比較したところ同様の結果が得られた。
    今回の研究で、妊娠第1三半期のドンペリドン曝露が出生児の大奇形発生のリスク増加と関連していないことを示すことができ、服薬妊婦の不安を軽減しうる根拠を提示できたと考えられる。欧米では催奇形カウンセリング施設が共同して実施したコホート研究により人胎児への催奇形リスクを解明した研究が報告されている。本邦では我々の研究が初めてのものであり妊婦服薬カウンセリング施設における妊婦曝露例・新生児データの集積と解析が有用であることが確認された。
    本研究は指針に則り両施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
  4. ドンペリドンの生殖発生毒性試験成績

    下村 和裕第一三共株式会社ワクチン研究所

    抄録

    日本で悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状に広く使われているドンペリドンは添付文書では「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと」となっている。その根拠として「動物実験(ラット)で骨格、内臓異常等の催奇形性が報告されている」と記載されている。しかし、最近、国立成育医療研究センターから、大規模な症例データベースを分析した結果、ドンペリドンには胎児リスクの増加には関連しないとのニュースリリースが行われた。
    ドンペリドンの生殖発生毒性試験の一部として、マウス、ラット、ウサギの経口投与による胎児の器官形成期投与試験およびラットの腹腔内投与およびウサギの静脈内投与による胎児の器官形成期投与試験が1980年以前に実施されている。いまより40年以上前であり、その当時の生殖発生毒性試験法ガイドラインおよび添付文書記載要領は現在のものとは異なる。日本では過去のサリドマイド禍の経験から、催奇形性評価に関して以前は医薬品そのもののハザード評価の傾向が強かったが、近年、ガイドラインも添付文書記載要領も国際的な調和が進められ、暴露を考慮したヒトにおけるリスク評価にシフトしてきている。
    今回、現在のガイドラインおよび記載要領を基にした視点から、あらためてドンペリドンの生殖発生毒性試験成績を評価してみたい。

【第2部】
座長:下村 和裕第一三共株式会社ワクチン研究所
  1. 小児・AYA世代がん患者に対する医薬品の生殖毒性に関するガイダンスについて

    鈴木 直聖マリアンナ医科大学産婦人科学

    抄録

    近年がん医療と生殖医療の発展に伴い、がん治療開始前に妊孕性(子供を将来授かる可能性)を温存できる小児・AYA世代がん患者が増加している。がん治療医は、がん治療開始まで時間的猶予が無い中で、がん患者に対して治療による性腺機能障害の可能性に関する正確な情報を伝え、生殖医療を専門とする医師との密な連携のもと、妊孕性温存療法に関する患者の意思決定を促す場を可能な限り早期に提供すべきである。なお、がん・生殖医療においては、原則としてがん治療が何よりも優先されることになる。一方、挙児希望を有するがん患者が、原疾患の状態によってはがん治療終了後早期に、妊娠をトライする場合がある。その際、抗がん薬による治療や放射線治療の配偶子に対する影響を排除した後に、がん治療終了後いつから妊娠をトライすることが可能になるのかが問題となる。生殖可能な若年がん患者等への医薬品使用が胚・胎児又は次世代に及ぼす影響を回避するために、米国食品医薬品局は2019年5月に、又2020年2月には欧州医薬品庁が本領域のガイダンスを公表した。しかしながら本邦には、本領域のガイダンスに該当する指針が存在していなかった。そこで、AMEDの「生殖能を有する者に対する医薬品の適正使用に関する情報提供のあり方の研究班」では、生殖医療、毒性学及び医薬品の安全対策に精通した専門家の意見を集約して、医薬品使用時の避妊に対する考え方に係るガイダンスを2021年3月に作成した。本講演では、小児・AYA世代がん患者に対する医薬品の生殖毒性に関するガイダンス並びにプレコンセプションケアの重要性に関する概説を行う。

休憩(10分間)

15:2016:50
DNTシンポジウム
妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達
座長:
青山 博昭一般社団法人残留農薬研究所
桒形 麻樹子国立医薬品食品衛生研究所
安全性生物試験研究センター毒性部第二室
  1. 妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達

    青山 博昭一般社団法人残留農薬研究所

    抄録

     欧米諸国では,複数の大規模疫学調査で妊娠期間中における母親の血中甲状腺ホルモン濃度の低下と出生児の知能低下との間に明らかな相関性が認められたことを契機に,妊婦の甲状腺機能低下に起因する児の僅かな知能低下に関する懸念が高まっている。このため,様々な化合物の毒性を評価するOECDの試験法ガイドラインにも,発生毒性試験や亜急性毒性試験で動物(発生毒性試験においては母動物)の甲状腺ホルモン(T3及びT4)及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)の定量的評価を追加する措置が取られた。また,様々な化合物の発達神経毒性(DNT)を迅速に予測する一連のin vitro試験法の開発や,甲状腺に対する影響が懸念される化合物についてDNT試験実施の要否を判断するための新たなin vivo試験(Comparative Thyroid Assay)の実用化が進んでいる。しかし,これらの試験で得られるデータの解釈やリスク評価の実施には未だ解決すべき問題が幾つも残っており,リスク評価に関わる専門家による議論が続いている。一方,我が国においてはこの問題に対する対応がやや遅れているように見受けられ,妊婦の甲状腺機能低下が出生児の僅かな知能低下を引き起こすリスクは,臨床現場においてもさほど深刻な問題として受け止められてはいないように感じられる。
     今回のシンポジウムでは,妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達をテーマに,様々な化合物のばく露が母親の甲状腺機能低下を介して二次的に胎児の神経発達に及ぼす影響を予測するために開発された最新の試験法について,毒性評価の専門家にそれらの概要を解説していただく。また,この問題に対する日本の医療現場の認識や様々な甲状腺疾患を持つ妊婦への対応について,甲状腺疾患を専門とする臨床医の立場から現状を報告していただく予定である。
  2. 化学物質の甲状腺ホルモン低下作用に起因する発達神経毒性ポテンシャルのスクリーニング

    山田 智也住友化学株式会社 生物環境科学研究所

    抄録

    Thyroid hormone(TH)は脳発達に必須であることから、母親の血中TH濃度が過度に低下した際、児の脳に発達障害が起きることがヒトや実験動物で報告されている。化学物質のなかには甲状腺でのTH合成の阻害作用や肝臓の代謝酵素誘導の二次的作用などによって血中TH濃度を低下させるものが散見される。これら化学物質による血中TH低下の程度と脳の発達障害発現との定量的な関連性は未だ充分には理解されておらず、特に肝代謝酵素誘導剤による軽微なTH低下作用の影響を精査する必要がある。発達神経毒性(Developmental neurotoxicity: DNT)の可能性が懸念される化学物質は、国際的に標準化されたDNT試験を実施してその影響の有無を調べる。しかしながら当該試験の実施には膨大な資源(動物・時間・費用)を要することから、多数の化学物質を評価するためにはより簡便なスクリーニング試験の開発が望まれる。我々は、Adverse Outcome Pathway (AOP) conceptを考慮し、児の脳発達障害の前段で必須過程として生じる血中や脳中のTH濃度の低下の有無を調べることでTH低下に起因するDNTをスクリーニングすることを考えた。実際には、米国環境保護庁が提唱する母ラットと児ラットとの血中TH濃度の比較試験Comparative Thyroid Assay(CTA)を用いて児動物の血中TH濃度への影響を調べること、また必要に応じて児動物の脳中TH濃度や脳の病理組織を追加観察する試験系の検証に着手した。今回、TH合成阻害剤propylthiouracil(10 ppm)あるいは肝代謝酵素誘導剤phenobarbital(1000 ppm)を混餌投与した後、母動物と胎児・児動物についてTH濃度を含む各種影響の有無を調べたので、CTAのDNTスクリーニングとしての有用性に関して考察したい。
  3. インビトロ発達神経毒性評価法の現状と今後の課題

    諫田 泰成国立医薬品食品衛生研究所薬理部

    抄録

    近年、自閉症スペクトラム障害・注意欠陥多動性障害など発達障害の子供が増加することが社会問題となっている。その原因の一つとして、胎生期の中枢神経系の発達に対する化学物質の影響が懸念されている。DNTガイドラインは妊娠動物を用いて化学物質の評価をしているが、コストや時間、多くの動物が必要となるため、動物実験代替法の観点からDNTが懸念される化学物質をメカニズムベースに評価可能なインビトロ評価法が議論されている。
    特に、ヒトiPS細胞は神経発生過程をカバーしているため、インビトロ DNT試験法に活用できることが想定され、現在、DNTガイダンスの議論が進行中である。我々はヒトiPS細胞の分化能およびヒトiPS細胞由来神経細胞のネットワーク活動評価できるMEAアッセイなどを用いてDNTが懸念される化合物のインビトロ評価を行うとともに、DNTガイダンスの専門家会議に参加している。
    さらに、臨床において、母体における甲状腺機能低下は子供の脳や発達に影響を与えることが知られているため、甲状腺ホルモンの影響を加味したインビトロ評価法の開発が期待される。
    本シンポジウムでは、インビトロDNT試験法の現状と今後の課題について議論したい。
  4. 妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達

    吉原 愛伊藤病院 内科

    抄録

    甲状腺ホルモンは胎児の神経発達に重要な役割を担っている。妊娠中に母体が甲状腺機能低下症でホルモン管理が不良であった場合、児の神経発達に影響することが知られている。ヒトの胎児における甲状腺ホルモン受容体は妊娠10週から発現が認められ、妊娠16週にはその発現は50倍に増加する。胎児の甲状腺が形成され、ホルモンが合成されるのは妊娠12~14週以降であり、それまでの期間は微量ではあるが甲状腺ホルモンは胎盤を経由して母体から供給され、胎児の中枢神経系の形成に重要な役割を果たしている。したがって、妊娠時に甲状腺機能低下症が判明した場合には速やかにT4製剤による甲状腺ホルモン薬の投与を開始する。また、甲状腺ホルモン合成についてはヨウ素が必要不可欠であり、ヨウ素欠乏状態にある場合にはさらに母体甲状腺機能低下症が胎児に与える影響は大きいと考えられる。ヨウ素欠乏地域において、ヨウ素補充を行ったところ児の認知機能の成績が上昇した。したがって、海外におけるヨウ素欠乏地域では妊婦のヨウ素補充を推奨している。観察研究において、妊娠中に内服介入のない妊婦から誕生した児のMRI検査を8-10歳で撮像したところ、灰白質、大脳皮質の容積は母体の妊娠初期の甲状腺刺激ホルモン(TSH)値、FT4値で適正な範囲にある群が最も容積が大きい山形の分布を呈した。甲状腺機能低下症に対する補充療法の有用性は確立されている。一方、甲状腺機能は正常でTSHが高値を示す潜在性甲状腺機能低下症やTSHは正常であるがFT4のみ低値を示す低T4血症といったマイルドな甲状腺機能異常については、児の知能との関連、補充療法の効果についても様々な報告があり、スクリーニングや補充開始する時期をふくめ、現在も議論が重ねられている。
17:0017:10
閉会式、次大会長挨拶

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日本先天異常学会 第21回生殖発生発達教育セミナー

※敬称略
8/7
より
公開
消化管発生の基礎と応用
金井 正美東京医科歯科大学 実験動物センター 疾患モデル動物解析学分野

抄録

 原始腸管 (primodial gut) は胚性内胚葉由来である。その後の発生ステージである器官形成初期には、口腔咽頭膜 (oropharyngeal membrane) と排泄腔膜 (cloacal membarane) によって頭側端と尾側端が閉じている盲管を形成し、部位特異的な遺伝子発現制御により領域特異性を生じ、前腸、中腸、後腸を構成する。また三次元方向 (背腹軸、前後軸、放射状) の位置情報により、消化管組織と器官発生構築がなされるが、この時期の腸管管腔形成とその不均衡による閉塞などが先天異常の重要なポイントとなる。胚性内胚葉決定にはSox (Sry-related HMG box) 17遺伝子が重要な役割を担うが、私たちはSox17 遺伝子が内胚葉発生に重要な役割を担うことをマウスモデルと用いて証明してきた。本講演では、初期発生の基礎について説明すると共に、初期内胚葉決定遺伝子であるSox17の器官形成期における新たな機能と疾患モデルとしての可能性について報告する。
8/7
より
公開
胎児と免疫
今井 耕輔東京医科歯科大学 小児科
大学院 医歯学総合研究科 茨城県小児・周産期地域医療学講座

抄録

 免疫系とは非自己である病原体から自己を守るためのシステムであり、大きく自然免疫系と獲得免疫系、細胞性免疫と液性免疫に分けることができる。自然免疫は非特異的であり、病原体かヒト細胞か、という部分を見分けて、排除のために病原体の増殖を抑えたり、炎症を起こしたりすることを主な役割としている。獲得免疫はT細胞とB細胞と抗体により成り立っており、特異的であり、記憶することが可能である。次に病原体が感染しようとしても排除することができるよう精緻な免疫反応を組み立てている。胎児における免疫系を考える上では、個体発生と免疫系の発達について知る必要がある。個体発生が系統発生を繰り返すことは、免疫系についても当てはまる。すなわち妊娠初期には、自然免疫系で対抗するしかなく、その結果、胎内感染では様々な合併症が生じることになるため、異なる病原体によってもTORCHと呼ばれる同じような表現型を取ることになるが、これが胎内感染によるインターフェロンαの過剰によるものであることが、偽TORCH症候群、Aicardi-Goutiers症候群の原因遺伝子の同定により、明らかになった。妊娠後期には、獲得免疫系が発達してくるが、サンプルを得る方法の限界から、その詳細な仕組みは明らかでなかった。しかし近年これについても、少量のサンプルで相当なことがわかるようになっている。その一つの技法が、T細胞の新生能を反映するTRECとB細胞の新生能を反映するKRECの活用である。この2つのバイオマーカーは、原発性免疫不全症に対する新生児スクリーニングにも利用可能であり、日本でも普及しはじめている。
8/7
より
公開
ラットにおけるVLA-4アンタゴニスト誘導体の催奇形性とその回避
下村 和裕第一三共株式会社 ワクチン研究所

抄録

VLA-4(インテグリンα4β1)は細胞表面リガンドである血管細胞接着分子-1(VCAM-1)に結合し細胞間接着に関与する。VLA-4は心臓の発達に重要な役割を果たしており、一部のVLA-4阻害薬が動物実験で心臓の異常を引き起こすことが知られている。この研究ではVLA-4阻害作用を有する誘導体の催奇形性をスクリーニング評価し、心臓に対する催奇形性を回避するために必要な条件を検討した。
VLA-4阻害誘導体17種類を妊娠10、11日または胎児の器官形成期(妊娠6-17日)にラットに1000 mg/kg/日で1日1回経口投与した。妊娠21日に母動物を麻酔して胎児検査を行った。非活性化状態である低親和性のVLA-4阻害作用の評価および血漿と胚中の薬物濃度を測定し、それらと心臓異常の発生率との関係を調べた。
心室中隔欠損(VSD)および左心房小型化(SLA)の出現率の増加が17種類中8化合物でみられた。VSDおよびSLAの発生率はさまざまで、0-100%の範囲であった。低親和性VLA-4の拮抗作用の程度とVSDおよびSLAの発生率との間に関係は認められなかった。母体の血漿中薬物濃度(Cmax)は、VSDおよびSLAの発生率の増加と関連性が認められたが、投与後24時間の胚における化合物の濃度がほぼみられない場合はこれらの発生率は増加しなかった。
胚における長時間の継続的な薬理活性は、心臓の内部細胞の接着を妨害する可能性があり、薬効の持続時間を24時間以内にすることにより、心臓の異常形成を回避できる可能性があると考えられた。

一般演題

8/7
より
公開
動画によるストリーミング講演
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