第21回生殖発生発達教育セミナー

日本先天異常学会 第21回生殖発生発達教育セミナー

※敬称略
8/7
より
公開
消化管発生の基礎と応用
金井 正美東京医科歯科大学 実験動物センター 疾患モデル動物解析学分野


[公開期間を終了しました]

抄録

 原始腸管 (primodial gut) は胚性内胚葉由来である。その後の発生ステージである器官形成初期には、口腔咽頭膜 (oropharyngeal membrane) と排泄腔膜 (cloacal membarane) によって頭側端と尾側端が閉じている盲管を形成し、部位特異的な遺伝子発現制御により領域特異性を生じ、前腸、中腸、後腸を構成する。また三次元方向 (背腹軸、前後軸、放射状) の位置情報により、消化管組織と器官発生構築がなされるが、この時期の腸管管腔形成とその不均衡による閉塞などが先天異常の重要なポイントとなる。胚性内胚葉決定にはSox (Sry-related HMG box) 17遺伝子が重要な役割を担うが、私たちはSox17 遺伝子が内胚葉発生に重要な役割を担うことをマウスモデルと用いて証明してきた。本講演では、初期発生の基礎について説明すると共に、初期内胚葉決定遺伝子であるSox17の器官形成期における新たな機能と疾患モデルとしての可能性について報告する。
8/7
より
公開
胎児と免疫
今井 耕輔東京医科歯科大学 小児科
大学院 医歯学総合研究科 茨城県小児・周産期地域医療学講座


[公開期間を終了しました]

抄録

 免疫系とは非自己である病原体から自己を守るためのシステムであり、大きく自然免疫系と獲得免疫系、細胞性免疫と液性免疫に分けることができる。自然免疫は非特異的であり、病原体かヒト細胞か、という部分を見分けて、排除のために病原体の増殖を抑えたり、炎症を起こしたりすることを主な役割としている。獲得免疫はT細胞とB細胞と抗体により成り立っており、特異的であり、記憶することが可能である。次に病原体が感染しようとしても排除することができるよう精緻な免疫反応を組み立てている。胎児における免疫系を考える上では、個体発生と免疫系の発達について知る必要がある。個体発生が系統発生を繰り返すことは、免疫系についても当てはまる。すなわち妊娠初期には、自然免疫系で対抗するしかなく、その結果、胎内感染では様々な合併症が生じることになるため、異なる病原体によってもTORCHと呼ばれる同じような表現型を取ることになるが、これが胎内感染によるインターフェロンαの過剰によるものであることが、偽TORCH症候群、Aicardi-Goutiers症候群の原因遺伝子の同定により、明らかになった。妊娠後期には、獲得免疫系が発達してくるが、サンプルを得る方法の限界から、その詳細な仕組みは明らかでなかった。しかし近年これについても、少量のサンプルで相当なことがわかるようになっている。その一つの技法が、T細胞の新生能を反映するTRECとB細胞の新生能を反映するKRECの活用である。この2つのバイオマーカーは、原発性免疫不全症に対する新生児スクリーニングにも利用可能であり、日本でも普及しはじめている。
8/7
より
公開
ラットにおけるVLA-4アンタゴニスト誘導体の催奇形性とその回避
下村 和裕第一三共株式会社 ワクチン研究所


[公開期間を終了しました]

抄録

VLA-4(インテグリンα4β1)は細胞表面リガンドである血管細胞接着分子-1(VCAM-1)に結合し細胞間接着に関与する。VLA-4は心臓の発達に重要な役割を果たしており、一部のVLA-4阻害薬が動物実験で心臓の異常を引き起こすことが知られている。この研究ではVLA-4阻害作用を有する誘導体の催奇形性をスクリーニング評価し、心臓に対する催奇形性を回避するために必要な条件を検討した。
VLA-4阻害誘導体17種類を妊娠10、11日または胎児の器官形成期(妊娠6-17日)にラットに1000 mg/kg/日で1日1回経口投与した。妊娠21日に母動物を麻酔して胎児検査を行った。非活性化状態である低親和性のVLA-4阻害作用の評価および血漿と胚中の薬物濃度を測定し、それらと心臓異常の発生率との関係を調べた。
心室中隔欠損(VSD)および左心房小型化(SLA)の出現率の増加が17種類中8化合物でみられた。VSDおよびSLAの発生率はさまざまで、0-100%の範囲であった。低親和性VLA-4の拮抗作用の程度とVSDおよびSLAの発生率との間に関係は認められなかった。母体の血漿中薬物濃度(Cmax)は、VSDおよびSLAの発生率の増加と関連性が認められたが、投与後24時間の胚における化合物の濃度がほぼみられない場合はこれらの発生率は増加しなかった。
胚における長時間の継続的な薬理活性は、心臓の内部細胞の接着を妨害する可能性があり、薬効の持続時間を24時間以内にすることにより、心臓の異常形成を回避できる可能性があると考えられた。
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