【O-5】ゼブラフィッシュの下顎低形成改善を指標とする放射線防護薬の探索
三重大学大学院 医学系研究科 統合薬理学
放射線を用いた診断・治療の発展により、医療被ばくの機会が増加している。胎児の器官形成期における被ばくは、先天異常の発生と密接に関係するため特に注意が必要である。放射線防護薬は、放射線を安全に利用するための有効な方法の一つであると考えられる。本研究では、ゼブラフィッシュを用いた放射線防護薬探索方法の確立を試みた。ゼブラフィッシュ稚魚へのX線照射の時期と照射量を検討したところ、受精36時間後に8Gyの照射を行うことで、ゼブラフィッシュの下顎低形成が誘導されることを見出した。この照射との同時投与により、下顎低形成を改善する薬物を探索したところ、葉酸が同定された。近年、器官形成期の放射線曝露に対する葉酸の保護的作用が報告されている。本研究において葉酸が放射線防護薬として同定されたことは、ゼブラフィッシュの下顎低形成改善を指標とする放射線防護薬探索の妥当性を支持するものと考えられる。