【S4-4】妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達
1)一般財団法人残留農薬研究所 毒性部
2)国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター 毒性部
2)国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター 毒性部
欧米諸国では,複数の大規模疫学調査で妊娠期間中における母親の血中甲状腺ホルモン濃度の低下と出生児の知能低下との間に明らかな相関性が認められたことを契機に,妊婦の甲状腺機能低下に起因する児の僅かな知能低下に関する懸念が高まっている。このため,様々な化合物の毒性を評価するOECDの試験法ガイドラインにも,発生毒性試験や亜急性毒性試験で動物(発生毒性試験においては母動物)の甲状腺ホルモン(T3及びT4)及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)の定量的評価を追加する措置が取られた。また,様々な化合物の発達神経毒性(DNT)を迅速に予測する一連のin vitro試験法の開発や,甲状腺に対する影響が懸念される化合物についてDNT試験実施の要否を判断するための新たなin vivo試験(Comparative Thyroid Assay)の実用化が進んでいる。しかし,これらの試験で得られるデータの解釈やリスク評価の実施には未だ解決すべき問題が幾つも残っており,リスク評価に関わる専門家による議論が続いている。一方,我が国においてはこの問題に対する対応がやや遅れているように見受けられ,妊婦の甲状腺機能低下が出生児の僅かな知能低下を引き起こすリスクは,臨床現場においてもさほど深刻な問題として受け止められてはいないように感じられる。
今回のシンポジウムでは,妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達をテーマに,様々な化合物のばく露が母親の甲状腺機能低下を介して二次的に胎児の神経発達に及ぼす影響を予測するために開発された最新の試験法について,毒性評価の専門家にそれらの概要を解説していただく。また,この問題に対する日本の医療現場の認識や様々な甲状腺疾患を持つ妊婦への対応について,甲状腺疾患を専門とする臨床医の立場から現状を報告していただく予定である。
今回のシンポジウムでは,妊婦の甲状腺機能低下と児の知能発達をテーマに,様々な化合物のばく露が母親の甲状腺機能低下を介して二次的に胎児の神経発達に及ぼす影響を予測するために開発された最新の試験法について,毒性評価の専門家にそれらの概要を解説していただく。また,この問題に対する日本の医療現場の認識や様々な甲状腺疾患を持つ妊婦への対応について,甲状腺疾患を専門とする臨床医の立場から現状を報告していただく予定である。