【S3-5】小児・AYA世代がん患者に対する医薬品の生殖毒性に関するガイダンスについて
聖マリアンナ医科大学 産婦人科学
近年がん医療と生殖医療の発展に伴い、がん治療開始前に妊孕性(子供を将来授かる可能性)を温存できる小児・AYA世代がん患者が増加している。がん治療医は、がん治療開始まで時間的猶予が無い中で、がん患者に対して治療による性腺機能障害の可能性に関する正確な情報を伝え、生殖医療を専門とする医師との密な連携のもと、妊孕性温存療法に関する患者の意思決定を促す場を可能な限り早期に提供すべきである。なお、がん・生殖医療においては、原則としてがん治療が何よりも優先されることになる。一方、挙児希望を有するがん患者が、原疾患の状態によってはがん治療終了後早期に、妊娠をトライする場合がある。その際、抗がん薬による治療や放射線治療の配偶子に対する影響を排除した後に、がん治療終了後いつから妊娠をトライすることが可能になるのかが問題となる。生殖可能な若年がん患者等への医薬品使用が胚・胎児又は次世代に及ぼす影響を回避するために、米国食品医薬品局は2019年5月に、又2020年2月には欧州医薬品庁が本領域のガイダンスを公表した。しかしながら本邦には、本領域のガイダンスに該当する指針が存在していなかった。そこで、AMEDの「生殖能を有する者に対する医薬品の適正使用に関する情報提供のあり方の研究班」では、生殖医療、毒性学及び医薬品の安全対策に精通した専門家の意見を集約して、医薬品使用時の避妊に対する考え方に係るガイダンスを2021年3月に作成した。本講演では、小児・AYA世代がん患者に対する医薬品の生殖毒性に関するガイダンス並びにプレコンセプションケアの重要性に関する概説を行う。