【S3-1】妊娠と薬情報センターのこれまでとこれから~15周年を迎えて~
国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター
妊娠と薬情報センター(JDIIP)は、妊娠中の薬物使用に不安を感じている女性に対して、薬物の安全性に関する情報を提供することと、相談事例に基づく疫学調査によるエビデンスの創出を目的として、2005年に厚生労働省の事業として設立された。JDIIPは設立以来、妊娠中の医薬品の適正使用を推進することで、母児の健康に多くの貢献をしてきた。カウンセリングが妊娠中に薬物を使用している女性の不安を軽減するために有効であること、妊娠継続の意思を後押し出産まで導いたということを客観的に示すこともできている。47都道府県の拠点病院で構成されたネットワークは、日本全国の女性への情報提供に重要な役割を果たしている。 安全性を解析したい薬剤への曝露事例は稀であることが多いため、質の高いエビデンスを得るためには、国内外の催奇形情報サービスのネットワークが必要である。 その一環として、JDIIPでは、JDIIPと虎の門病院のデータを組み合わせたエビデンスの作成に取り組んでいるが、ドンペリドンの安全性に関する論文はその典型的な例である。JDIIPは、薬剤師や医師の教育、各医学会の臨床診療ガイドラインの作成に貢献している。2016年からは、厚生労働省からの委託を受け、添付文書改訂に関する提言書作成も行っている。免疫抑制剤は、そのプロジェクトの最初の成果であった。今後の課題としては、相談したい人が気軽に相談できる環境を作ること、安全性の根拠を作りやすい仕組みを作ること、組織の継続的な発展を目指すことなどが挙げられる。