【S2-3】双胎の胎盤異常と先天異常と胎児治療
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター
双胎妊娠は単胎妊娠に比べ児の先天異常の発生頻度が高く,双胎妊娠でも二絨毛膜双胎に比べ,一絨毛膜双胎において発生頻度が高い.一絨毛膜双胎ではtwinningによる異常(結合双胎,無心体双胎など)や胎盤吻合血管による血流異常(心奇形,小頭症,水頭症,小腸閉鎖など)など一絨毛膜双胎に特有な病態があるためである.一絨毛膜双胎では二児で一つの胎盤を共有するために胎盤には両児間の吻合血管が存在する.胎盤吻合血管を介して両児間の慢性的な血流不均衡を来したのが双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome:TTTS)である.一絨毛膜双胎の約10%にみられ,児の発育不全,心不全,脳神経障害,早産,子宮内死亡などを来す極めて予後不良な疾患である.TTTSに対しては胎児鏡下レーザー凝固術(fetoscopic laser photocoagulation :FLP)という胎児治療が行われる.子宮内へ胎児鏡を挿入して病因である胎盤血管をレーザー凝固して血流不均衡を改善する治療法である.2004年ランダム化比較試験で有効な治療法であることが証明されTTTSに対する第一選択治療法となり,本邦でも良好な治療成績が示され2012年に胎児治療法として初めて保険収載された.本邦のFLP施行例は2018年に2000例を超え,年間約200例が施行されている.治療成績は少しずつ向上しており,少なくとも1児生存率は95%以上に達し,長期予後は3歳時での脳神経障害は8.5%であった.胎盤吻合血管による血流異常が胎児治療によって子宮内で改善できる可能性がある.妊娠中期以降に発症するTTTSに起因する脳神経異常の発症を防ぐ可能性は示唆されている.以前は実験的・先進的治療であったが今や標準的治療となったTTTSに対するFLPを通して,双胎の胎盤異常と先天異常について胎児治療の観点から考察する.